レポート[report]

2017.
4.17

「法律家・法務人材を目指す人の為のキャリアデザイン」実施レポート

「法律家・法務人材を目指す人の為のキャリアデザイン」実施レポート
 4月1日から東京、関西、九州の法科大学院で新入生向けに弁護士・法務人材のキャリアデザインに関するセミナー「法律家・法務人材を目指す人の為のキャリアデザイン」を実施し、約300名の学生にご参加いただきました。

「司法試験合格者数減少」、「法科大学院入学者数減少」、「弁護士の就職難」等、ネガティブなニュースが一部メディアや弁護士から発信されていることもあり、セミナーが始まる前は不安を抱えながらこれからの法科大学院での生活に臨む新入生が大半でしたが、セミナー終了後には多くの学生から「報道と実情がかけ離れていることが分かった」、「就職が心配だったが安心した」、「自身のキャリアや専門性を意識しながら法科大学院で勉強を頑張りたい」などの前向きな意見が聞かれました。

 まず、弊社から新入生の方々にお伝えしたのは「弁護士・法務人材の採用マーケットは、法律事務所、企業、官公庁、地方自治体、どの業種においてもニーズが高まっている。弁護士ならびに法科大学院修了生は決して就職難などではなく、むしろ、売り手市場である」ということです。

 先日の「69期司法修習終了者の就職動向調査」でもお伝えしましたが、直近5年間の司法修習終了者(以下、修習生)の就業先割合はおよそ以下の数値で推移しています。司法試験合格者数が1,800人台に減少した後もこの割合はほとんど変わっていません。強いて言えば弁護士未登録者と即独推定者が減少傾向にあり、その分、組織内弁護士が増加傾向にあります。

■修習生の就業先別割合
就業先 修習生の就業割合
法律事務所弁護士 約80%
組織内弁護士(企業、官公庁、地方自治体、その他団体) 約5%
即独推定弁護士 約3%
裁判官・検察官 約8%
弁護士未登録者 約4%

 具体的な人数の推移は、昨年の「68期司法修習修了者の就職状況調査」と今後、追加情報を発信していく「69期司法修習終了者の就職状況調査」を見て頂けると、ほとんどの修習生が最終的に就業しており、「弁護士の就職難」等の報道と実態が大きくかけ離れていることがご理解いただけると思います。

 では、このような状況にありながら、なぜ「弁護士の就職難」という情報ばかりが報道されるのか? 我々の仮説は以下の通りです。

 ・毎年、司法修習終了直後の12月に新人弁護士の一括登録がある。
 ・一括登録時点での弁護士登録をする司法修習終了者(以下、修習生)は約70%、未登録者は約30%(直近数年は400~500名)いる。
 ・一括登録から約1ヶ月経った1月末時点では、未登録者は約10%(直近数年は200名弱)に減少。さらに約半年後の6月末時点ではほとんどの修習生が弁護士登録を済ませ、未登録者は約5%(直近数年は60~90名)にまで減少する。
 ・この僅かに残った約5%の未登録者の中には、弁護士会費負担を避けるため、あるいは業務に弁護士資格を必要としない企業などに就職したため、あえて弁護士登録をしないで就業している人も含まれているので、ほとんどの修習生は就職できていると推測される(文部科学省資料参照)。
 ・つまり、「4月就職の企業や公務員など、就業予定であるものの入所・入社のタイミングの関係で、弁護士一括登録時点では弁護士登録をしていない修習生」が数多く存在しているにもかかわらず、就業予定の未登録者が大勢いる弁護士一括登録時点の数値を引き合いに出され「弁護士の就職難」が謳われている。

 新司法試験制度に変わって弁護士の供給が増えた結果、それまで以上に競争が発生し、収入が少なくなった弁護士が出てきたり、弁護士の平均年収が数年前より下がったりしたのは事実ですが、弁護士業界全体がそのような暗い話ばかりかというと、当然そんなことはありません。

 下がったと言っても、平均年収は依然として会社員や公務員より高い水準にあり、中には数千万から億単位の報酬を得ている弁護士もいます。また、若い弁護士でも渉外事務所は1年目から1,000万円以上の報酬を得ていますし、そうでなくても専門性を高め、若くして独立して1,000万円以上の報酬を得ている弁護士や大都市圏への集中を逆手に取り、弁護士の少ない地方でマーケットを確立して業績を上げている弁護士もいます。

 近年、弁護士の就業先や就業形態の多様化が顕著です。特に企業では、新卒からインハウスローヤーになる弁護士や法律事務所からインハウスローヤーに転職する弁護士は、もはや珍しいものではなくなっています。さらには、CLO(チーフ・リーガル・オフィサー)という肩書が一般に広がり、執行役員として活躍するインハウスローヤーも増えてきています。
 先日、弊社が掲載した「2017年全国インハウスローヤーランキング」に名を連ねる企業において、特に上位企業は弁護士の採用を伸ばし続けており、常に良い人材を探している状況です。他方で、このランキングには載っていない企業においても、法曹資格者(司法修習に行ったが弁護士登録をしていない人)や司法試験に合格したが司法修習に行っていない人を積極採用する企業、弁護士会費負担を避けるあるいは業務に弁護士資格を必要としないため司法試験未合格者を積極採用している企業も多数あります。
 現在、日弁連には約1,700名のインハウスローヤーが登録しており、早ければ来年には5大事務所の総弁護士数2,000名を上回る見込みです。増加の背景としては「上場企業を中心とする法務ニーズの拡大(コンプライアンス、ガバナンス、グローバル対応等)」、「ベンチャー企業のIPO準備」、「中小企業の法務組織設立」等があり、弁護士の企業進出はこれからますます加速していくでしょう。

 法律事務所に関しても近年、新たな変化が見受けられます。数年前までは「存在しない」とさえ言われていた、企業から法律事務所へ転職する弁護士、一般民事系法律事務所からいくつかの転職を経て専門性を高め、大手事務所から声がかかる弁護士など、今まででは考えられなかったようなキャリア事例が出てきているのです。
 弁護士・法務人材供給量が減少している中、企業の弁護士・法務人材の需要拡大は、大手企業の顧問事務所を担う5大事務所を筆頭に、大手法律事務所の人材需要拡大につながり、司法試験合格者数が1,800人台に減少した後も大手事務所が採用数を減らすことなく、むしろ増加させる状況を生み出していると言えるでしょう。
 その結果、法律事務所の新卒採用マーケットでは、大規模事務所と小規模事務所の二極化、そして東名阪などの大都市圏への集中が一層進む格好となっています。法律事務所に就職する修習生のうち、約8人に1人が5大事務所に就職する時代になっている点にも、マーケットの変化が如実に表れています。

 官公庁、地方自治体についても弁護士・法務人材の進出が進んでおり、国家公務員の法務区分として就業する人材の他、法律事務所や企業を辞職もしくは出向という形で、任期付公務員として就業している弁護士が多く存在します。
 特に官公庁の場合、各省庁の専門分野に関する知見を深めるため、経験を積む目的で就業する弁護士が多いようです。また、地方自治体も近年は弁護士採用に積極的で、職員の法律相談対応や条例整備等の対応で活躍している方が多くいます。
 司法試験と国家公務員試験は例年、同時期に実施されるのですが、修了生は法科大学院で学んだ法律知識を生かし、法律科目で国家公務員試験を並行して受験する人が多いのも特徴です。

 また、未合格者についても就業先の多様化が進み、法律事務所でパラリーガルやスタッフとして勤務する人、法科大学院で学んだ知識を生かしてベンチャー企業の法務や上場企業の管理部門、取締役や執行役員に近いところで法的な助言をするポジションに就き、そこで得た経験を活かしてキャリアを築いていく人、国家公務員や地方公務員、NPOなどで法律の知識を活かす人などが見受けられるようになってきているのも注目すべき点でしょう。

 弊社は業務の中で多くの求職者の就職・転職をサポートしていますが、色々な方のお話を聞く中で感じるのは、「弁護士・法務人材のキャリア形成で最も大切なことは、弁護士資格の有無にかかわらず、自分はどういう法律家になりたいのか?」というビジョンを持つことなのではないかと思います。
 5大事務所が本格的に海外展開し始めたのが2010年頃。1960年代に企業が海外進出していったのに対して、日本の法曹業界は50年も遅れているとも言われますが、それはまだまだ開拓の余地やチャンスが多分にある、ということでもあります。AIやITと何かを混ぜ合わせた新しいテクノロジーなど、様々なビジネスが世の中に生まれてくるたびに、新しい法律が求められます。
 弁護士・法務人材の活躍の場が社会の随所に広がり、ますます多様化が進んでいく中、新入生の皆さんには是非、このようなマーケット、社会で自身が何をしたいのか、自身が学んだことをどのように活かしていきたいのか、ということを意識していただきながら法科大学院での勉強に取り組んで頂きたいと思います。そうすることで、自ずと必要な知識や能力、法科大学院修了後のキャリアビジョンが見えてくるのではないでしょうか。

【2017年「法律家・法務人材を目指す人の為のキャリアデザイン」実施状況】(2017年4月14日時点)
日程 法科大学院
4月1日(土) 学習院大学法科大学院
4月3日(月) 同志社大学法科大学院
4月4日(火) 立命館大学法科大学院
4月4日(火) 一橋大学法科大学院
4月4日(火) 上智大学法科大学院
4月5日(水) 青山学院大学法科大学院
4月6日(木) 九州大学法科大学院
4月13日(木) 中央大学法科大学院
4月13日(木) 首都大学東京法科大学院
(各法科大学院のHPにジャンプします。)

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 このように、弊社が、調査、収集している各種情報をまとめた客観的データを提示しながら、正しいマーケット状況を説明し、併せて当該法科大学院のOB・OGがどのような法律事務所、企業に就職しているか、地域性なども含めて正しいマーケット情報を新入生の皆さんに紹介しました。
 また、大学の教授、職員の方々にも弊社が調査、修習している情報の有意性を感じていただき、定期的なセミナー開催のご要望をいただきました。弊社としても今回のセミナーを通じて、今後も大学と協力してこのようなイベントを継続的に実施し、正しいマーケット情報を学生ならびに関係者に広めていくことの重要性を改めて感じた次第です。

 弊社では、今回のセミナー等のイベントを通じて、求職者サイドである学生並びに大学関係者に各種情報を提供するとともに、求人サイドである企業に対しても「社内弁護士・法務人材採用セミナー」を定期開催し、情報提供を行っています。
 こちらの企業向けのセミナーには毎回、弁護士の採用、法務組織の拡充を検討されている多くの企業人事・法務御担当者にご参加いただき、採用方法、スケジュール、人材の定着、法務組織構成のポイント等についてご説明しています。学生同様、セミナーに参加する前と後で法曹業界や弁護士、法科大学院修了生採用への認識が大きく変わったり、具体的な採用活動を始めるきっかけになったり、好評をいただいています。

 弊社では各種データや事例をもとに、様々な採用ニーズに対するソリューションを提案して参りますので、採用にお困りの法律事務所、企業に置かれましては是非ご相談ください。